デベロッパーやエンジニアは、いいデジタル製品をより速く開発し、記録的な速さで市場に投入し、ダウンタイムやユーザー体験の低下のリスクを排除したいと考えていますが、従来の開発手法だと、デベロッパーが何千ものタスクのワークフローを綿密にコーディングするのに多くの時間を費やすため、これがよく妨げられてしまいます。

そこで、ローコード開発プラットフォームが、この問題に対処するためのソリューションとしてますます人気が高まっています。本質的でありながら反復的だったり、時間のかかるさまざまなアクションを自動化や簡素化するということは、企業はユーザーへより速やかにアプリを提供でき、より良い第一印象を生み出し、顧客との関わりを高めることができるようになるということです。

ローコードの解説

ローコードのソフトウェアソリューションは、ビジュアルまたはドラッグ&ドロップの UI(ユーザーインターフェース)を利用し、よりスピーディーなアプリケーション開発を可能にします。このような直感的なインターフェースと、ユーザーによる最小限のコーディングを組み合わせることで、IDE(統合開発環境)が実現され、それによって、デベロッパーは専門的なスキルを活かしながら、Webアプリケーションやモバイルアプリケーション、その他のデジタル製品を作成する際に、作業を効率化するさまざまな自動化サービスやアイコン、画像などを利用することができます。

ちなみに、ノーコードのプラットフォームは若干異なり、ノーコード環境では、その名が示すように、ユーザーは手動でのコーディングが全く必要ありません。このようなインターフェースは通常、純粋に視覚的で、プログラミング用語の代わりに自然言語が使用されています。

ローコード開発の活用事例

DevOpsチームは、ローコードのプラットフォームを使って、どのようなものを作成できるのでしょうか。制限はありませんが、デベロッパーがローコードのソフトウェアを使う方法は以下のようなものがあります:

  • オンラインマーケットプレイスなどのECサービスの作成
  • アポの予定作成
  • CRM(顧客管理システム)アプリの構築
  • デジタルコマースのアプリやサービスの構築
  • レガシーシステムの更新
  • CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上
  • 遠隔医療サービスのデザイン

ローコードやノーコードサービスへのシフト

Statista によると、ローコードのプラットフォームの市場規模は、世界的に見ると約225億ドルで、2024年には320億ドルに達し、年平均成長率26%以上で成長すると予測されています。また、ガートナー社 は2022年12月に独自の予測を発表し、ローコード開発技術の市場が2023年には20%成長するとの予測を示しています。でも、なぜ最近になって人気が急上昇しているのでしょうか。

ローコード開発のメリット

人気が急上昇しているのは、ローコードの方法論が、デベロッパー、ITチーム、そして企業経営者にまで評価される数多くのポジティブなポイントを備えているからであり、それは、DevOpsチームの作業をしやすくだけでなく、組織の収益を上げるということでもあるのです。

市場投入までの時間短縮

デベロッパーがすべてを手作業で行う必要がない場合、プロジェクトはより早く完了します。ベータテスターや社内ユーザーにMVP(minimum viable product:顧客のニーズを満たす最小限のプロダクト)をより早く提供すれば、より早くフィードバックを得て、市場に出せるアプリにするために必要な改良を行うことができるのです。

シンプルで低リスクなデプロイ

従来の方法で開発されたアプリの発売日は、デベロッパーがバグや不具合、ダウンタイムに対処するための準備をするため、あわただしくなる可能性がありますが、多くのローコードツールでは、デベロッパーが発生した不具合を解消する間、アプリを以前のバージョン(理想的には安定性が実証されているもの)にロールバックするオプションが用意されていることにより、エンドユーザーのエクスペリエンスを改善し、組織の評価を有機的に上げることができます。

リソース消費の削減

社内に1人か2人のDevOpsスペシャリストしかいない場合、新しいことを始めるには、彼らが取り組んでいるプロジェクトが終わるまで待たないといけないかもしれませんが、ローコードツールを使えば、高度な専門知識がなくても始められるので、ビジネスの時間とリソースを最大限に活用できます。

より大きな連携

ここでも、複数のプログラミング言語に適性があり、ビジネス アプリのソース コードを記述して理解するプロのデベロッパーが 1人か 2 人しかいないという例を使いましょう。 ローコード開発ツールを使うと、ある程度のプログラミング適性がある限り、他のチームや部門からメンバーを採用する可能性があり、営業、人事、CX など、それぞれの分野で専門知識を提供することができます。また、プロジェクトに貢献するために、連携者一人ひとりがプロジェクトの基本的なコードを完全に理解しないといけないということはもうなく、それによって、データのサイロ化を防ぎ、連携と情報共有の企業文化が促進されます。

デジタルコンピテンシーの向上

ローコードまたはノーコード開発ソリューションは、専門家レベルのコーダーやプログラマーがまったくいない企業でも、アプリを作成できるようにするものです。各ビジネスは、オンラインで顧客と関われないといけませんが、その実現のためにコストや時間を費やす必要はもうありません。

超自動化のさらなる可能性

自動化は、各タスクを手作業で行うことにいちいち時間を費やしたくないデベロッパーやソフトウェアエンジニアにとって不可欠なものです。多くのローコードのプラットフォームは、さまざまなワークフローの自動化を提供し、それによって、ビジネスは ITプロセスを含むできるだけ多くのビジネスプロセスを自動化するDX(デジタル変革)の一側面である「ハイパーオートメーション」へ移行できるようになります。

ROI (投資対効果)向上の可能性

アプリをより早く市場に投入し、より少ないリソースで運用することができれば、ROI が上がるのは当然のことです。また、より安定し、より頻繁に更新されるアプリを評価するユーザーによって、ROI が上昇することもあります。このようなユーザーは、良い経験を共有し、それによってウェブサイトやアプリ、その他のデジタル・エンゲージメント・ポイントへのトラフィックが有機的に上がるかもしれません。

中小企業や起業家にとってのメリット

低予算のビジネス・ユーザーは、専任のコーディング・スペシャリストを雇うのは、特に会社の設立初期には大変であると感じるかもしれません。ローコードのソフトウェアは通常、SaaS(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)またはPaaS(Platform as a Service:サービスとしてのプラットフォーム)として提供されるため、スタートアップでも予算を確保しやすくなっていますが、ローコードソリューションを最大限に活かすには、ある程度のコーディング経験が必要であることに留意することが重要です。

サポートチャネルの充実

このようなプラットフォームはサブスクリプションベースの有料オプションであるため、多くの場合はサポートが多数用意されており、プロバイダーからのメール、チャット、電話によるサポートに加え、オンラインフォーラムやコミュニティでアドバイスを受けられることもよくあります。

ローコード開発のデメリット

ローコードソリューションには、実際にデメリットがあるのでしょうか?あると考えるデベロッパーもいます。Coveros社のトム・スティーム氏は、アジャイルソフトウェアのデベロッパーですが、ローコードやノーコードのソリューションには、ただ単に複雑すぎるものがあると信じており、「90年代のVB(ビジュアルベーシック)でも同じようなことがありました。VBは貴重な存在で、多くのソフトウェアがVBで書かれていましたが、結局、一部のアプリケーションで要求される複雑さが原因で、VBは破綻し、良いソリューションではなくなりました。ローコードも同じようになるでしょう。」と言っています

もちろん、彼が正しいかどうかはまだわかりませんが、ローコード環境の台頭に関連して、一部の専門家が懸念を示している問題は他にもあります。

スケーラビリティ(拡張性)

スケーラブルなサービスは、ビジネスとともに成長していかないといけません。ローコードソリューションをシチズン・デベロッパーに売り込むと、結果的にサービスが拡大し、圧力やトラフィックなどの需要増に対応することが制限されるのではないかという懸念がありますが、そうである必要はありません。結局のところ、ローコード開発ツールは、アプリ制作のための代替手法を提供するだけであり、デベロッパーは、ツールが目的に適っている限り、好きなだけプロジェクトを拡張できるはずです。

安全性

最新のシステムをモニタリングする上で最も重要な側面の1つに可観測性(オブザーバビリティ)がありますが、一部のデベロッパーの間では、コードのあらゆる側面を完全に制御できないことが、システム内の可観測性を制限してしまうのではないかという懸念があります。また、DevOpsチームは、ドラッグ&ドロップでアプリを構築するシステムにおいて、事前に構築されたコードのすべての側面が、自分で構築した場合と同じくらい安心安全であることをどのように信頼できるでしょうか。そこで、「リサーチ」の出番となるわけです。大抵のPaaSプロバイダーは、自分たちが提供する安全性を証明する必要があり、これについてはかなり透明性が高いでしょう。もし少しでも疑問があれば、ベンダーに相談するか、他の専門家のユーザーレビューを調べましょう。

カスタマイズの機会が少ない

従来のWebやアプリケーションの開発には手作業でのコーディングの専門家が必要であり、企業によってはコストがかかる場合があります。ただ既に専門の開発チームがある場合だと、ビジネス仕様にぴったり合ったアプリを作るのに必要な独自のカスタムコードやその他の手動変更が簡単に入力できないと不満がたまるかもしれませんが、ありがたいことに、最近の大抵のローコードオプションは実際にかなりカスタマイズ可能であり、ローコード PaaS の作成者がデベロッパーの要求を真剣に受け止めていることがわかります。

ベンダーから抜け出せないかもしれない不安

ローコードアプリケーションの開発は、ほとんどの場合、プロプライエタリな製品に加入するということです。それは組織によっては、コストが高すぎたりサービスレベルが低かったりするソフトウェアプロバイダに永久に依存してしまうことが懸念されたり、あるツールから別のツールへの切り替えも一筋縄ではいかないかもしれません。それに対して、ゼロからコーディングする場合だとこのようなことは全くなく、先程述べた通り、慎重なリサーチにより、柔軟なオプションを持つ信頼できるプロバイダーを選択することができるのです。

ローコードはノーコードではない -つまり必ずしもシンプルではない

ローコードのアプローチはノーコードという意味ではないので、プログラミングの予備知識なしに独自のアプリを開発しようとするビジネスユーザーにとっては、急激な学習曲線となる可能性があります。素人のコーディング愛好家であれば、その場で学習できるかもしれませんが、プログラミング経験のない熱心なスタートアップ経営者だと、結局フラストレーションを溜め込んで時間とお金を無駄にしてしまう可能性が高いのです。そこでノーコード環境が、このような問題を解決してくれます。

開発期間の短縮と市場投入のスピードアップは、ローコード開発フレームワークへの激変には鍵となる推進力であることは間違いありません。もちろん、否定的な意見もありますが、ローコード革命にはデメリットよりもメリットの方が多くあります。自動化技術やAI(人工知能)やML(機械学習)が進化するにつれ、ビジネステクノロジーのより多くの側面が、より幅広いプログラミング適性にアクセスできるようになり、あらゆるレベルでローコード、あるいはノーコードのソリューションが利用できるようになることが予想されます。

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