マイクロサービスとWebサービスの違いは、現代のアプリデザインにおいて異なる概念を扱っている点です。マイクロサービスとは、非常にフォーカスされたサービスを可能な限りうまく実行する、小さく独立したアプリのことであり、Webサービスは、あるアプリの「サービス」を、異なるプラットフォーム上で動作するアプリケーションから利用できるようにするインターネットベースのインターフェースです。

マイクロサービスは、現在アプリ開発で最も人気のあるコンセプトの1つであるため、Webサービスよりも注目されています。ただ、どちらの概念も、モジュール式のサービス指向アプリケーションアーキテクチャの構築の際には非常に関連性が高いため、どちらも最新のアプリデザインの全体像にどのように適合するかを理解するのは重要です。

本記事では、以下の項目でマイクロサービスとWebサービスの違い、メリット、デメリットを探っていきます:

目次

概要比較|マイクロサービスとWebサービス


以下は、マイクロサービスとWebサービスを最もシンプルに定義したものです:

  • マイクロサービス:より大規模なアプリケーション・アーキテクチャのために特定のサービスを実行する、小規模で自律的なアプリ
  • Webサービス:あるアプリサービスを、Webインタフェースを介して他のアプリから利用できるようにするための戦略

アプリケーション・アーキテクチャの構築には、マイクロサービスもWebサービスも利用できますが、ここでは、両者のアーキテクチャ・スタイルについて簡単にご説明します:

  • マイクロサービス・アプリケーション・アーキテクチャ:疎結合で独立して動作するマイクロサービスから構成される、モジュール式のサービス指向のアプリケーションアーキテクチャ。これらのマイクロサービスは通常APIを提供し、他のマイクロサービスやアプリが統合できるようになっている。
  • Webサービス・アプリケーション・アーキテクチャ:モジュール化されたサービス指向のアプリケーションアーキテクチャで、アーキテクチャを構成するアプリケーションはWebサービス経由で接続される。デベロッパーは、Webサービスを利用して、マイクロサービスやモノリシックなアプリケーションなどを接続し、より大きなアプリケーションの形成ができる。

最近のサービス指向のアプリケーション・アーキテクチャでは、マイクロサービスとモノリシック・アプリケーションが混在しているのが一般的であり、また、アプリケーションとそれを構成するマイクロサービスのサービスとの統合のために、APIとWebサービスを組み合わせて使用することも一般的です。

詳細比較|マイクロサービスとWebサービス

マイクロサービスとWebサービスの共通点、相違点をいくつかの視点から見てみましょう。

サービスの特異性

「サービスの特異性」という点では、マイクロサービスは非常に特殊なサービスやタスクを実行します。たとえば、Facebook メッセンジャーのプラットフォームには、ファイルの添付を処理する特定のマイクロサービスが含まれており、FacebookのAttachment Upload APIを使用することで、この特定の機能にアクセスできます。

これに対し、Webサービスは、1つのアプリから1つまたは複数のサービスを提供することができるため、Webサービスアーキテクチャでは、アプリによって提供されるさまざまなサービスへのアクセスを整理することができます。例えば、eコマースアプリの場合、あるWebサービスは顧客向けの注文と支払いサービスを提供し、別のWebサービスは顧客向けでない在庫サービスを提供することができます。このサービスへのアクセスは別々のWebサービスによる提供ですが、同じアプリに属する可能性があります。このように、Webサービスで、同じアプリケーションに属するさまざまなサービスへのアクセスを管理および制御できます。

プラガビリティ

マイクロサービスとWebサービスのアプリケーション・アーキテクチャでは、デベロッパーは、より大きなアプリケーション・アーキテクチャを形成するマイクロサービスやアプリを簡単に追加、削除、アップグレードすることができます。このモジュール化により、アプリ全体を混乱させることなく、アップグレードがより速く、より安く、より簡単に実現できるため、より柔軟でアジャイルなアーキテクチャが実現されます。

マイクロサービスでは、HTTPとHTTPSの両方をサポートし、異なるメッセージ形式やプロトコル間の接続を確立できるため、それらを接続するAPIにはより柔軟性があります。
これに対し、WebサービスはHTTPSをサポートしておらず、接続されたコンポーネントは同じメッセージ形式とプロトコルを共有する必要がありますが、Integrate.ioのようなiPaaSは、Webサービス接続のメッセージ形式とプロトコルの要件を簡単にカバーできます。

コスパ

マイクロサービスは、多くの場合、コンテナで実行されます。複数のコンテナを同じOSカーネル上で実行できるため、大規模なアプリケーション・アーキテクチャを構成するさまざまなマイクロサービスを実行するのに必要なOSライセンスの数が減り、コストが削減されます。また、APIの普遍的な接続能力は、デベロッパーがマイクロサービスのAPI接続を確立する際に、手動でコーディングされたポイントツーポイント接続の構築に必要な労力を省くことができるため、時間とコストを節約できるということになります。一方、WebサービスはHTTPベースのAPIプレゼンテーションなので、手動でコーディングされたポイント・ツー・ポイントの統合にかかる時間と費用も省くことができます。最後に、マイクロサービスとWebサービスのアーキテクチャはどちらもプラグイン可能であるため、アップグレードがより速く、よりシンプルで、より費用対効果に優れています。

レジリエンス

マイクロサービスやWebサービス・アーキテクチャでは、1つのマイクロサービスやアプリに不具合が発生しても、エコシステムの残りの部分に影響を与えるカスケード故障が発生する可能性は低くなります。どちらの場合も、デベロッパーはサーキットブレーカーのデザインパターンを実装することで、サービスの障害を検出し、システムに接続されている他のマイクロサービスやアプリケーションに障害が発生するのを防ぐことができます。


言語とプラットフォームアグノスティック

デベロッパーは、実際にあらゆるプログラミング言語で書かれたあらゆるプラットフォーム上で動作するアプリを接続することで、マイクロサービスまたはWebサービスの両方のアーキテクチャを作成することができます。このため、デベロッパーは、アーキテクチャを構成するさまざまなマイクロサービス、アプリ、Webアプリケーションに最適な言語とプラットフォームを自由に選択することができ、また、プレミスからプレミス、プレミスからクラウド、クラウドからクラウドへの統合も容易に実現できます。


小規模開発チーム

マイクロサービスとWebアプリは、どちらも開発チームの規模を小さくし、より集中させ、管理しやすくすることができます。管理者は、各Webサービスやマイクロサービスの所有権を小規模な開発チームに割り当てることができ、これにより、チームは、他のシステムとのコーディングの競合を心配することなく、アプリの単一の側面を完成させるために、より独立してきめ細かく作業することができます。
ただ、Webサービス開発チームは、Webサービス統合で共有される共通のメッセージフォーマットとプロトコルに関して、同じページに留まる必要があることに注意しましょう。

マイクロサービス・アプリケーション・アーキテクチャ

マイクロサービスベースのアプリケーション・アーキテクチャは、従来のモノリシックなアプリをそのコンポーネント機能に分解します。モノリスのように、すべてのアプリ機能を1つのソースコードにプログラミングするというよりは、マイクロサービスアーキテクチャでは、各機能を小さな自律的に動作するアプリ、すなわちマイクロサービスとして分離し、通常、コンテナ化した環境で動作させます。

マイクロサービスベースのアプリケーションを構成するマイクロサービスのグループは、通常、APIを通じて相互に接続されます。このようなマイクロサービスベースのアプリを開発する場合、デベロッパーは、アプリを構成するマイクロサービスへのアクセスの管理や、統合の確立を簡単にしてくれる、Integrate.ioのようなAPIゲートウェイを使うことができます。

マイクロサービスにおけるAPI接続の柔軟性

APIは、XML、XML-RPC、JSONなどの最も多様なメッセージ形式と、HTTP、HTTPS、MQTT、REST、SOAPなどの最も多様なメッセージプロトコルをサポートしているので、マイクロサービスの接続方法として推奨されています。


次の項目でお話しますが、デベロッパーはマイクロサービス・アプリを「Webサービス」を介して接続し、Webサービス・アプリケーション・アーキテクチャを形成することも可能です。

マイクロサービスの仕組みの詳細については、こちらのガイド 「What Are Microservices?」をご覧ください。


Webサービス・アプリケーション・アーキテクチャ


より大きなアプリケーションに代わって特定の機能を実行する代わりに、Webサービスは、あるアプリのサービスをインターネット上の他のアプリに利用可能にする、標準化されたウェブベースのインタフェースを提供します。

W3.orgは、Webサービスの役割を以下のようにうまくまとめています:

「Webサービスとは,ネットワーク上で相互運用可能なマシン間のインタラクションをサポートするためにデザインされたソフトウェアシステムである。Webサービスは,機械処理可能な形式(特にWSDL)で記述されたインタフェースを持っており、他のシステムは,SOAPメッセージを用いて,その記述によって規定された方法でWebサービスと対話する。SOAPメッセージは,通常,他のWeb関連標準と連携してXMLシリアル化とともにHTTPを用いて伝達される。」


Webサービスを使用すると、さまざまなアプリが相互に接続および対話できるため、デベロッパーが個々のアプリを接続してWebサービス・アプリケーション・アーキテクチャを構築するために使用する接着剤のようなものになります。実際、WebサービスはAPIであり、むしろAPIの表現の一つです。Artjoker Blogではこの区別を以下のように説明しています:


「​​Webサービスは、サードパーティのソフトウェアソリューションとの接続にHTTPプロトコルを使用する多くのAPI表現の一つに過ぎません(公平を期すため、まれにこの接続がSMTPなどの他のトランスポートプロトコルによって確立されることもお伝えしておきます。)」


Webサービスのもう一つの見方は、APIの「HTTPラッパー」として見ることです。このHTTPラッパーは、特定のアプリに属するさまざまなサービスをWebインターフェースを介して提供するため、接続システムがさまざまなプログラミング言語で記述され、別々のOSプラットフォームで実行されている場合でも、他のアプリケーションやマイクロサービスがそれらのサービスと対話する事ができます。

このように、Web サービスは、クラウド間、サーバー間、サーバーとプレミス、クラウドとプレミス、クライアントとサーバーなどの接続に関係なく、橋渡し役として機能するため、異なる場所で動作する多様なソフトウェアコンポーネントを接続したい企業にとって、特に有用なものとなっています。 

ただし、Webサービスを利用する上で、注意点がいくつかあります:

  • Webサービス・アプリケーション・アーキテクチャを構成するアプリとWebサービスは、同じメッセージフォーマット(通常はXMLまたはJSON)を共有しなければならない点
  • アプリケーションとWebサービスは、HTTP、MQTT、REST、SOAPなどの同じメッセージプロトコルを共有しなければならない点

幸いにも、Integrate.ioのような高度なiPaaSソリューションでは、メッセージをあるフォーマット/プロトコルから別のフォーマットに変換することで、この接続の柔軟性の欠如とも言える点を迅速にカバーすることができます。

Webサービスの仕組み

ここでは、SOAPベースのWebサービスが、サードパーティクライアントとそのサービスを提供するアプリとの間の統合を確立するために、どのように機能するかを簡単に説明します。

  1. Webサービスは、クライアント(またはサードパーティアプリ)が、Webサービスの背後に位置するアプリのサービスにアクセスできるようにするウェブベースのインターフェースです。
  2. クライアントは、Webサービスをホストしているサーバーに一連のRPCリクエストを送信することで、Webサービスを呼び出します。RPCリクエストの利点は、例えば、クライアントが.Netで、アプリケーションがJavaで書かれていたとしても、どちらもWebサービスを通じて通信することができるといったように、クライアントとアプリケーションがどのような言語で書かれているかは関係ないことです。
  3. WebサービスはRPCに応答して、クライアントにXMLデータを返します。XMLは、ほとんどのプログラミング言語が理解できる標準的なメッセージングプラットフォームのことです。
  4. XMLドキュメントをクライアントに送信する際、WebサービスはメッセージングプロトコルSOAPを使用し、HTTPでデータを送信します。

Webサービスが適している場合

最新のアプリケーション・アーキテクチャを開発する場合、あるいは大規模な企業のITインフラを管理する場合は、マイクロサービスとモノリシック・アプリを組み合わせて統合する必要がある可能性が高く、WebサービスとAPIの組み合わせでこれらの多様なシステムを接続することになります。最近は、マイクロサービスやAPI接続が最も注目されているのは事実ですが、アプリの接続にはWebサービスの方が適している場合もあります。

  • 単一のモノリシックなアプリが提供する様々なサービスへのアクセスを整理する場合、Webサービスの利用で、モノリスの特定のサービスを異なるWebサービスを通じて利用できるようにする「サービス指向型アーキテクチャ」を作成することができ、これで同じモノリシック・アプリケーションのさまざまな側面へのアクセスを管理・組織化できます。
  • マイクロサービスはそれぞれ対応するデータベースへの接続を持つため、すべてのマイクロサービスが常にデータベースを呼び出していると、マイクロサービス・アーキテクチャはシステム・リソースに負担をかける可能性があるが、逆に、モノリシックなアプリケーションでは、必要なデータベース接続や呼び出しの数が少なく、システムリソースの節約ができる。Webサービス接続では、デベロッパーはサービス指向型アーキテクチャの恩恵を受けると同時に、多すぎるデータベース呼び出しによるシステムのスローダウンを抑えることができます。

Webサービスやマイクロサービスの接続の簡単な構築

このガイドを読んだ後は、マイクロサービスとWebサービスが何であるか、そしてマイクロサービスとWebサービスベースのアプリはどのように違うかについて、もう少しわかってきているはずです。また、Webサービス接続がAPIよりも優れた解決策を提供する状況も認識できるようになるはずです。

新しいアプリやITインフラを開発する場合、Integrate.ioのiPaaSは統合のボトルネックを解消することができます。高度なAPIゲートウェイおよびWebサービス接続ソリューションとして、Webサービス統合のためにXMLをJSONに、SOAPをRESTに自動的に変換することができ、さらに、このプラットフォームには、接続したいシステムのREST APIを瞬時に生成するポイント&クリックのインターフェースが備わっています。

Integrate.ioを試してみよう

Integrate.ioの新機能がリリースされました。このリリースでは、特にデータベースAPI生成に関するUX(ユーザーエクスペリエンス)に重点を置いています。MySQL, MariaDB, PostgreSQL, MS SQL Server, Oracleなどの最も人気のあるデータベースコネクタは、長い間、長いオプションリストを含んでおり、どれが必須でどれがオプションなのかが明らかではありませんでした。この問題を解決するために、サービス作成フォームを【基本設定】、【キャッシュ設定】、【オプションの詳細設定】の3つのセクションに分けました。さらに、【サービス】タブは、新規ユーザーがログイン後に最初にクリックすべきタブであるため、ナビゲーションバーで【ホーム】タブに続く2番目の位置に移動させました。

今後のリリースでは、API生成プロセスにおいて新規ユーザーをより効果的に案内することを目的とした、一連の更なるUX改善が行われる予定です。特に、ほとんどの基本的なユースケースにおいて、管理者は【APIの生成】、【RBAC(ロールベースアクセスコントロール)の作成】、そして【RBACと新しく生成されたAPIキーの関連付け】の3つのタスクを行うので、API生成に成功すると、ユーザーには典型的な次のステップを列挙した新しいビューが表示されることになります。また、サービスプロファイルの詳細ページを改良し、管理者が API ドキュメントや関連するロールなど、サービスに関連する他の管理機能に直接アクセスできるリンクリストを提供することにも取り組んでいます。

データ統合プラットフォームであるIntegrate.io内では、企業はクラウド上でデータの統合、処理、分析のための準備を行うことができます。コードや専門用語を有しなくても使用できる環境であるため、ハードウェア、ソフトウェア、または関連インフラに投資することなく、どのような組織・個人でもビッグデータがもたらす機会をご享受頂けます。
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