ビジネス環境が進化し続ける中、65%の企業が「ビッグデータを受け入れなければ、自社は無用の存在になる」と回答していますが、あらゆるデータを自社組織の利益のために活用する前に、まずは集めた構造化データと非構造化データ両方の処理が必要です。

今日のデータ主導の世界では、膨大な量の情報を効率的かつ効果的に処理する能力が最も重要であり、データ処理は、貴重なインサイトを引き出し、十分な情報に基づいた意思決定を行い、さまざまな業界のイノベーションを推進する上で、極めて重要な役割を果たしています。
情報の力を活用するには、さまざまな種類のデータ処理を理解することが非常に重要なのです。

2023年におけるデータ処理の最もシンプルで最もよく知られた形態は、依然としてデータの可視化ですが、データと対話するのにさまざまなデータ処理方法が一般的に使用されており、各アプローチにはそれぞれ独自の利点があります。

以下は5つの主なデータ処理方法です:

  1. トランザクション処理:データの入力や取得などの個々の操作のリアルタイムでの処理であり、銀行取引やオンライン取引などのアプリケーションで一般的に使用される。
  2. 分散処理:並列処理のために、相互接続された複数のコンピューターまたはサーバーにデータ処理タスクを分散し、それによって大規模システムやビッグデータアプリケーションの効率を強化する。
  3. リアルタイム処理:データが生成または受信されるとすぐに処理され、ローレイテンシーと素早い応答時間が求められ、監視システムや金融取引などのアプリケーションで使用される。
  4. バッチ処理: バッチまたはグループで一連のデータ処理タスクを実行し、時間をかけて集められ、大量に処理される。通常、データのバックアップやレポート作成など、非リアルタイムのタスクに使用される。
  5. マルチプロセッシング:複数のプロセッサまたはコンピューティング ユニットを利用してタスクを同時に実行し、タスクをより小さなサブタスクに分割して同時処理する。ハイパフォーマンス コンピューティングおよび並列コンピューティング アプリケーションのパフォーマンスを上げるのに使用される。

本記事では、データ処理方法の基本的な5つのタイプと、可用性、原子性、並行性、その他の要素におけるそれらの違いについて深く掘り下げていきます。トランザクション処理、分散処理、リアルタイム処理、バッチ処理、マルチプロセッシングの複雑さを解き明かし、データの活用と変換の可能性の世界を解き放ちましょう。

また、5つの主要なデータ処理タイプに加えて、理解するのに役立つかもしれない「 商業データ処理」、「科学データ処理」、および「オンライン処理」の3つのデータ処理タイプがあります。 この各タイプのデータ処理についても簡単に見ていきましょう。

目次

データ処理方法の違いが重要な理由

使用されるデータ処理方法によって、クエリに対する応答時間と出力の信頼性が決まることから、データ処理手法は慎重な選択が必要です。 例えば、証券取引所ポータルなど、可用性が重要な状況では、トランザクション処理が推奨されます。

データ処理とデータ処理システムの違いには注意しておくことが重要です。 データ処理とは、生データを有用な情報に変換するためのルールを指し、データ処理システムは、特定の種類のデータ処理用に最適化されたアプリケーションです。 たとえば、タイムシェアリングシステムは、タイムシェアリング処理を最適に実行するように設計されており、バッチ処理の実行にも使用できます。 ただし、この仕事ではあまりうまく拡張できません。

その意味で、ニーズに合ったデータ処理タイプを選ぶ際には、適切なシステムを選択しないといけません。

また、どのようなデータ処理タイプを選択するにせよ、データ処理方法を制限する業界や地域における最近のデータガバナンスの枠組みには注意すべきです。例えば、GDPR(EU一般データ保護規則)や CCPA (カリフォルニア州消費者プライバシー法)のような法律は、電子データ処理に影響を与えます。

データ処理の最も一般的な種類とその用途については、以下をご覧ください。

関連記事Data Engineering: What is a Data Engineer and How Do I Become One?データエンジニアリング:データエンジニアとは、どうすればなれるのか?

トランザクション処理

トランザクション処理とは、記録や保存が必要なイベントや取引である「トランザクション」を処理するタイプのデータ処理であり、一般的には、売上や購入などの活動をデータベースに記録することが含まれます。

トランザクション処理は、ミッションクリティカルな状況で展開され、これは、例えば前述の証券取引所取引の処理など、中断された場合にビジネス運営に悪影響を与える状況のことを言います。また、トランザクション処理では、可用性が最も重要な要素であり、可用性は以下のような要因に影響されます。

  • ハードウェア: 冗長コンポーネントは自動的に引き継がれ、コンピューター システムの稼働を維持することから、トランザクション処理システムには、部分的な障害を許容できるハードウェア冗長性があるべきである。 
  • ソフトウェア:トランザクション処理システムのソフトウェアは、障害から速やかに回復すべきであり、通常、トランザクション処理システムはトランザクションの抽象化を用いてこれを実現する。つまり、障害が発生した場合、コミットされていないトランザクションは中断され、それによって、処理装置のようなシステムをサッと再起動できる。

 分散処理

分散処理とは、ネットワークを介して接続された複数のコンピュータに処理を分割するコンピューティングプロセスのことであり、1台のマシンで実現するよりも高速で信頼性の高いサービスを提供することを目的としています。

データセットが大きすぎて1台のマシンに収まらないことは頻繁に起こりますが、分散データ処理では、このような大きなデータセットを分解して複数のマシンやサーバーに分散して保存することで、データ管理を改善します。そしてこれは、Hadoop 分散ファイルシステム(HDFS)の上に成り立っています。分散データ処理システムには高い耐障害性があり、ネットワーク内の 1 つのサーバーに障害が発生した場合はデータ処理タスクを他の利用可能なサーバーに再割り当てでき、その作業でそこまで時間を食われることはありません。

また、分散処理はコスト削減にもつながります。皆さんのようなビジネスでは、CPU(Central Processing Unit)が搭載された高価なメインフレームコンピューターを構築してその維持やメンテナンスに投資するようなことはもう必要ありません。

分散処理の一般的な例としてストリーム処理とバッチ処理が挙げられますが、それをこれから見ていきましょう。

リアルタイム処理

リアルタイム処理とは、データが生成または受信されるとすぐに計算するプロセスです。分散処理の一種であり、入力されたデータストリームをリアルタイムで取り込んで分析することで、分析によって得られたインサイトに基づいて速やかに行動することができます。

リアルタイム処理は、リアルタイムでの出力が期待される状況で使用するという点でトランザクション処理に似ていますが、両者はデータ損失の処理方法に違いがあります。リアルタイム処理は、入力されたデータを可能な限り速やかに計算し、入力データにエラーが発生しても、そのエラーは無視され、次に入力されるデータの塊に移ります。そしてリアルタイムデータ処理の最も一般的な例として、GPS 追跡のアプリケーションが挙げられます。

これをトランザクション処理と比べてみましょう。システム障害などのエラーが発生した場合、トランザクション処理は進行中の処理を中断して再初期化します。おおよその答えで十分な場合には、トランザクション処理よりもリアルタイム処理の方がいいかもしれません。

データ分析の世界では、ストリーム処理はリアルタイムデータ処理の一般的なアプリケーションです。Apache Storm によって初めて一般化されたストリーム処理は、入ってきたデータを分析します。IoTセンサーからのデータや、消費者の行動のリアルタイムでの追跡を思い浮かべると、Google BigQuerySnowflake が、リアルタイム処理を採用したクラウドデータプラットフォームの例として挙げられます。そしてその後は、AI(人工知能)やML(機械学習)を使った BI(ビジネスインテリジェンス)ツールにデータを通すことで、意思決定に影響を与える価値あるインサイトを生み出すことができます。

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バッチ処理

その名が示すように、バッチ処理とは、一定期間にわたって蓄積されたデータの塊をまとめて、あるいは一括(バッチ)して分析することです。ビジネスオーナーやデータサイエンティストが詳細なインサイトを得るのに大量のデータを分析が必要な場合に必要となり、例えば、売上高は通常バッチ処理され、企業はチャート、グラフ、レポートなどのデータ可視化機能を使ってデータから価値を引き出すことができます。大量のデータを扱うと、システムの処理には時間がかかりますが、データをバッチ処理することで、計算リソースの節約になります。

スピードよりも正確さが重要な場合は、リアルタイム処理よりもバッチ処理の方がいいかもしれません。さらに、バッチ処理の効率は、単位時間当たりに処理されるデータ量である「スループット」で測ることができます。

マルチプロセシングとは、2つ以上のプロセッサーが同じデータセットを処理するデータ処理の方法です。分散処理と全く同じように聞こえるかもしれませんが、両者には違いがあります。マルチプロセッシングでは、さまざまなプロセッサーが同じシステム内に存在することから地理的に同じ位置に存在しており、それでコンポーネントに障害が発生すると、システムの速度が下がる可能性があります。

対する分散処理では、互いに独立したサーバーを使い、位置的に異なる場所に存在することもあります。今日、ほとんどすべてのシステムがデータを並列処理する機能を備えているため、大抵のデータ処理システムではそれぞれマルチプロセシングが使われています。

本記事においては、マルチプロセッシングにはオンプレミスのデータ処理システムがあるものと見なされ、 通常、例えば製薬会社や石油・ガス採掘産業に従事する企業など、非常に機密性の高い情報を扱う企業は、分散処理ではなくオンプレミスのデータ処理を選択する可能性があります。

ちなみに、この種のデータ処理における最も明白な欠点はコストであり、社内にサーバーを構築して維持するのは非常にコストがかかります。

追加的なデータ処理3種 

データがどのような目的で必要なのかにもよりますが、以下のような電子データ処理の追加的なタイプに関する背景情報も参考になるでしょう。

商用データ処理: 商用データ処理は、販売や在庫などのビジネス関連データの管理に重点が置かれています。 データベースと ERP システムを採用して業務の効率化や、意思決定のサポートを行い、事業運営の強化や、収益性の向上を目的としています。

科学的データ処理: 科学的データ処理は、生物学や物理学などの分野における研究や実験データの分析に用いられます。複雑な計算、シミュレーション、モデリングなどのタスクを、専用のソフトウェアを使って処理し、科学知識の発展や、技術革新への貢献を目的としています。

オンライン処理: オンライン処理では、オンラインバンキングなどのアプリケーションに非常に重要な即時データ処理が行われ、データは継続的に更新されるため、ユーザーは最新の情報にアクセスできます。オンライン処理は、タイムリーなデータアクセスで、シームレスでインタラクティブな体験を提供することを目標としています。

データ処理のためのデータ準備

データを処理して分析する前に、データの準備が必要ですが、この目標を達成する最善の方法の1つに、データを抽出して変換し、それを対応する処理先に格納する「ETL ツール」の使用があります。よくできた ETL ツールだと、データ準備の自動化や、データ処理サイクルの効率化が実現します。

ETL プロセスの仕組みは以下のようになります:

  • RDB(リレーショナルデータベース)、トランザクションデータベース、CRM(顧客関係管理)システム、SaaS ツールなどのデータソースからデータを抽出し、ステージングエリアに配置する。
  • そのデータを分析用読み取り可能な形式に変換し、データの検証やクレンジングなどのタスクを実行する。
  • 対応するターゲットシステムにそのデータを格納する。

関連記事2024年版・ETLツール14つの比較など

さまざまなデータ処理に対して Integrate.io ができること

データを簡単に ETL して、そのデータを処理および分析できる適切なツールをお探しでしたら、Integrate.io にお任せ下さい。Integrate.io の ETL パイプラインを使えば、将来の分析のためにデータを準備する作業は簡単です。コード不要のデータパイプラインプラットフォームのシンプルなグラフィカルインターフェースで、複雑なコードを書く必要がなくなり、100以上のよく使われるデータコネクタとの統合サポートがすぐに提供されます。また、API を使って、カスタマイズと柔軟性がサッと実現されます。

Integrate.io があれば、データ処理に費やされる時間が減り、データ分析に多くの時間を割くことができます。そしてこのプラットフォームは、ELT、リバース ETL、CDC(変更データキャプチャ)、データウェアハウスのインサイト、データオブザーバビリティも可能です。

Integrate.io が 分析のためにデータを準備することで、さまざまな種類のデータ処理がより簡単になります。詳細をご希望の方は、こちらからぜひデモをお申し込みください。 

Q&A

Q. なぜデータ処理の種類を理解することが重要なのでしょうか?

A. データ処理の様々なタイプを理解するのは、組織が膨大な量の構造化データおよび非構造化データを処理する効率性と有効性に直接影響することから極めて重要であり、価値あるインサイトの引き出し、十分な情報に基づいた意思決定、業界全体でのイノベーションの推進には非常に重要です。また、65%の企業がビッグデータを導入しなければ、自社は無関係になると考えており、適切なデータ処理方法の選択は、ビジネスの関連性と競争力に大きな影響を与える可能性があります。

Q. 手動データ処理は自動データ処理とどう違うのでしょうか?

A. 手作業によるデータ処理では、データの入力や処理に人が介在するため、処理速度が遅く、ミスが発生しやすいですが、自動データ処理だと、コンピュータシステムやソフトウェアを利用することによって、人が介在することなくタスクが実行され、速度、効率、正確性が上がります。本記事では、トランザクション処理、分散処理、リアルタイム処理など、現代のビジネス環境で必要とされる大量のデータを高速かつ確実に処理するための自動データ処理を取り上げています。

Q. 企業、特に証券取引所のような重要な業務でトランザクション処理を使用する利点は何ですか?

A. トランザクション処理は、データの入力や検索といった個々の操作をリアルタイムで処理できるという大きな利点があり、これは証券取引所のようなミッションクリティカルな状況において最も重要です。また、トランザクション処理の主な強みは、ハードウェアの冗長性と迅速な回復ソフトウェアメカニズムによってサポートされる可用性を重視していることにあります。これにより、システム障害によってビジネス運営が悪影響を受けることがなくなり、中断のない可用性が重要なアプリケーションに推奨される方法になっています。

Q. 分散処理によって、企業のデータ管理とコスト効率はどのように上がるのでしょうか?

A. 分散処理は、相互接続された複数のコンピュータやサーバーに処理を分割し、並列処理を可能にすることでデータ管理を改善します。この方式では、1台のマシンでは大きすぎる大規模データセットを効率的に処理できるため、処理速度とサービスの信頼性が上がります。さらに、高価なメインフレームコンピューターやそのメンテナンスに投資する必要がないため、高い耐障害性とコスト削減が実現し、データ管理の改善と運用コストの削減に有効なソリューションとなります。

Q. 企業はなぜリアルタイム処理よりもバッチ処理を好むのでしょうか?その効率の尺度は何ですか?

A. 企業は、即時の結果よりも正確さを重視する場合、リアルタイム処理よりもバッチ処理を好むかもしれません。バッチ処理では、時間をかけて集められた大量のデータをまとめて分析するため、売上高からインサイトを得るなど、詳細な分析が必要なタスクに適しています。 またこの方法は、データを大きなバッチで処理することで計算リソースを節約するため、大量のデータを処理する場合のリソース効率が高くなります。そしてバッチ処理の効率は、単位時間当たりに処理されるデータ量であるスループットで測定されるため、正確さよりもスピードが重視されない詳細な分析に適しています。